Econometric Societies

 

2017.6.4 香港中文大学

 

香港と武漢でふたつのEconometric Societyに参加してきました。

まず、武漢大学でのChina Meeting(6月9日―11日)。本当は、帰国日の6月11日がAlbart Park, Justin Lin Yifuのスピーチが集中したChina Dayだったのですが、わたしは授業があるので、残念ながら参加できず、もどってきました。こちらは武漢大学の学生を中心に中国人の若手が一生けん命勉強している感じでした。ボランティアの学生たちもきびきびしていて気持ちよかったです。また、日本語専攻でもないのに日本語をちょっと使ってみたい、という感じがなんだか新鮮でした。コンニチハ、アリガトウゴザイマス、なんか、とりあえず言ってみるという感じでした。

セッションをみると、中国人のスター研究者のいる計量経済学、理論の分野が活況を呈している感じで、Han Hongのかなり高度な推定方法に関するスピーチは、教室から人があふれ出ていました。わたしがじっくり聞いたのは、中国のSkill Laborが必要とされている地域、分野を探索する研究、Competing Savingが起こるメカニズムを探求する研究、そして労働収入ではなく資本収入が格差をもたらしているが、同時にある程度は成長ももたらしている、という研究のセッション。個人的には、二番目のTalkが面白かったです。中国の世代別の貯蓄率をみると20代から30代にかけて急激に上昇したあと、急激に減少し、50代後半からまた上昇するというV字型の様相があるというのが事実としてひろく確認されつつある。これは、結婚をするために家を買い車を買う必要があるという状況をファイナンスするために起こっているのではないか、というCompeting Savingの議論の説明を試みたものでした。このCompeting Savingという議論は、Rolen Brandtなども論文を出しているようで、面白そうです。講演者は20代の高い貯蓄率にフォーカスしていましたが、50代以降の急激な貯蓄率の上昇も検討に値する現象だろうと思いました。
武漢は、水と緑にあふれと歴史の風情が深い、本当に良い街です。ここにしばらく滞在してみたいなあ、と改めて思いました。中国ローカルの地の強さを満喫できる気がします。

その前の週の香港中文大学でのAsian Meetingのほうが海外からの参加者も多く、内容も多岐で面白かったです。とにかく、目の前の現象について、観念的に論じる前に測ってみよう、見て記録してみよう、という精神がある程度共有されていて、心地よかったです。招待講演のひとつは、シカゴのデータをベースに、政治家の来歴を親の仕事、所得、本人の仕事その他で測ってみようという報告でした。そこで面白かったのは、親もしくは本人がCEOや医者という人が多いこと、けれど所得分布でみると、必ずしも高い所得層ではない人からも代表者が選ばれている、後者は、代表者としての能力が十分にあるといえるのか、という感じのスピーチでした。データの発見は面白かったですが、最後の点については、これは経済学者の限界だな、とも思いました。効率的な資源配分を市場がするならそこで担われない再配分と公正性の判断は政治家が行うしかないわけです。とすると、政治家の出身履歴は多様であるべきです。政治学的な議論の知見、その他社会学や心理学といった他分野の知見をもっと経済学者は謙虚に学ぶべきだなと思いました。
自分自身は、中国の国有企業の競争中立性の検証を行う論文とベトナム・インドネシアのバイク市場の競争戦略を計量的に把握するとジャイアント・ホンダなどの足りない部分を析出するという論文(こちらは共著者が発表)で参加しました。どちらも実証IOのセッションに入れてもらった結果、同じフレームワークの優秀な中国人研究者がオーディエンスにいて、適確なコメントをもらえてうれしかったです。

他の方の報告では、アメリカの市場について、携帯電話市場での製品点数の多さが消費者のメリットにつながっているのか、広告会社というのはトラブルシューターの役割を果たしているのか、という報告、フランスの市場での携帯電話のブロードバンドへの転換を阻むのはスイッチコストである、自動車集積の形成メカニズム、コンテンツ配信についてファイル共有ソフトが課金コンテンツの収入を減らしているのかそれともスピルオーバー、宣伝効果を発揮しているのかを検証した論文などでした。

また、わかい中国人研究者が、中国の自動車市場の需要と供給の検証をしていたのですが、日本ブランドは質の向上に貢献していることを析出して面白かったです。供給側の特徴として混合市場が成立している、つまり、国有自動車メーカーは消費者のメリットと自分自身の利益を合わせたものを最大化する行動をとっているという仮定をするりと入れて検証していました。それは事実に反するのではとコメントしたら、結構びっくりしていました。国有企業と競争の問題は、やはり地味に後ろにかくされてしまっているテーマなんだな、と思いました。

この論点、中国の政策文書を丁寧に整理して並べればクリアにわかることなのだけど、いまアメリカで学んでいる報告者の学生には、ちょっとできないんじゃないかな、と思います。難しいことを勉強する前に、高校と大学のはじめの頃に、日本でいうところの公民的な知識を調べる方法を学ぶのが市民社会の基本だと思います。が、そこが抜け落ちているれいに時折ぶつかります。社会がどうなっているのか、まず見てみて感じてみて、全体がどのように統合されているのか、感覚で確認してほしいな、と改めて思いました。これは、自分が学生と接する時への戒めです。

自分自身の国有企業の競争中立性に関する論文は、通常の実証IOのフォーカスよりも粗い制度の影響についての分析なので、すこしお作法を外した論考になっていました。香港と武漢のどちらでも中国の若い研究者からは、国有企業の生産性が低いのは本当か、どちらもとても大きくて万全な経営をしているように見える、というコメントが来ました。国有企業の問題はあまり中国人研究者の間では人気がないんだな、と感じながら、今回のコンファレンスで生産性の計測を丁寧にやりなおしてみると、国有企業の生産性は民営企業に劣るという報告がある、と指摘すると、結構真剣に考え始める感じがありました。みんな気が付かないけれど、説明されればわかる、という感じで、建設的な議論に終始して嬉しかったです。

このふたつの学会の間に、深圳でゼミの調査の下見・動作確認と称して、いろんなかたに各所を案内してもらいました。こちらは本当に刺激的でした。また別に書きます。この刺激的な空気は、ぜひ若い人に感じてもらいたいです。ゼミ調査の準備頑張ります

 

 

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