「ビッグデータとAIの活用がもたらす新しいビジネスと競争政策」シンポ

ビッグデータと競争政策というシンポに行ってきました。http://www.jftc.go.jp/cprc/koukai/sympo/2018notice_2.html

AIの経済学という本の著者のJoshua Gans、EUの競争政策担当エコノミストであるSvend Albaek、オックスフォード大学の競争法の専門家Ariel Ezrachiが、プラットフォーム企業のなどがデータを蓄積していく中で、いかに競争阻害的になるのを防ぐのか、というのがテーマでした。

本来個人に帰属するデータを一部の企業が保有することで、競争阻害的になる可能性は考えられます。この状況への介入の考え方として、データポータビリティというものがあります。これは、実には、フェイスブックもグーグルも自発的にデータポータビリティを提供しています。

Gansは、「このデータポータビリティは、データを特定企業が囲い込む程度を緩めるだけで、本質的な解決にならない。個人から蓄積されたデータをビジネス界が誰でもアクセスできるようにしたいのであれば、アイデンティティポータビリティの考え方が有効である」という話していました。ん、どこかで聞いたことがある、これはまさに中国の社会信用制度の、国家による強制的なデータ共有がやってることやん、という話に聞こえました。じゃあプライバシーの問題とどう折り合いをつけるのか。ここが焦点だと私は思ってるのですが、そこは論点になりませんでした。

ビッグデータが問題だとすると、価値を生んでいるのは何なのか、は、データなのか、アルゴリズムなのか。2015年Lear Conference on the Economics of Competition Law コンファレンスで、当時マイクロソフトのエコノミストだったマカフィーはデータだ、といい、グーグルのエコノミストであるバリアンはアルゴリズムだ、と主張したそうです。それぞれの会社の競争優位の源泉を評価してほしい、という主張だったのでしょうか。

あと、プライバシーの問題を焦点と考えると、データを広告などの形で第三者に使わせるマッチング型のビジネスモデルと、自社のサービスの品質向上のみに使う場合では、規制は後者に対してより力点が必要になるとわたしはいま考えてますが、こうしたビジネスモデルによる場合わけの議論はなされませんでした。

また、アルゴリズムの組み方によってはカルテル的な状況が起きうるという主張は、当初なるほどと思いました。が、よく考えると価格アルゴリズムである限り、経済学が延々と分析してきたとおり、不当に高い価格が均衡として成立するのは、逆にむずかしいんじゃないか、と思いました。
いろいろ勉強になりましたが、国家とデータ、プライバシー保護と、データの共有による公平な競争環境の創出の2つには、トレードオフの関係にあり、そこにはまだ誰もクリアな答えを出していないのだろうというのが、最大の発見かな。

あと、政府の情報管理のデータ化について、日本はまた絶望的なほどに遅れているらしいという一端を知りました。インドは、全国民の課税や社会保障受給をなるべく浸透させるためにも個人IDのデータ化を進めているようで、Unique Identity Authority of Indiaという省庁があるのを初めて知りました。
https://uidai.gov.in/

後発性の利益というのか、テクノロジーについて、過去のしがらみのない後発国が先進国を追い抜いていくのは、なに対中国だけにおきているわけではないようです。日本のマイナンバーの惨憺たる状況を思うに、先発性の障害の大きさを感じました。

Follow me!