クアルコムの特許販売契約は競争阻害的だったのか 中国スマートフォン市場2011-2014年の分析

2017年11月11日 中国経済経営学会 於 桃山学院大学

わたし個人は、中国のスマートフォン向け半導体市場におけるクアルコムの競争阻害行為に関する判断が実証的に確認できるのか、という研究を報告してきました。需要推定をもとに、便益、コスト、競争上のポジショニングを記述統計的に報告しました。クアルコムは、CDMA系列の通信用チップの標準基準特許をもっており、その特許に対するライセンスフィーを過剰に高く設定し、チップセット化によって事実上抱き合わせ販売になってしまうCPUの市場において、ライバルの限界費用を引き上げている可能性は高い、というのが、今のところの分析結果です。これは、規制の経済学でHorizontal Foreclosureと呼ばれる行為があった可能性がある、ということになります。
ただ、この問題、一筋縄で行かないと思うのは、この業界における、ビジネスモデルとイノベーションをめぐる協業をどう評価するか、です。クアルコムの強さは、技術力に加え、ビジネスモデルにあります。チップセット&オープンソースとして販売することで、ユーザーの製品の便益をあげ、コストを下げていることも分析結果として見えてきています。この戦略は、産業の発展、スマートフォンの爆発的な普及を支えた要因でもあります。ですので、産業の発展、動学的な市場の成長について、クアルコムは貢献をしてきたことも間違いないのです。
この報告についていただいて、いくつかの発見を示してもらったけど、結局クアルコムの行為の何がわるくて、何がよかったという結論なのか、コメントを相次いでいただきました。全体として、便益とコストのがどう相殺されているのかを、検証していけばいいのかな、ということを、気づきました。その意味で、論文の方向性についてわかったことがあったのをよし、としたいと思います。
需要推定からわかる市場の構造をもとに、これまで事例研究でしか語ることができなかった、企業の競争、イノベーションの方向性、などなどを、経済理論を背景にした計量分析として、明らかにしていく分析というのは、可能性があるの思うのですが、どうでしょう?、とひとりごとをつぶやいてみます。

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